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触るミュージアム! 慶應義塾大学 日吉学レポート(後編)

2016年11月2日 書いた人:ホリユキハ
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こんにちは、ホリ ユキハです。

 

日吉学「触る!楽しむ!縄文ミュージアム」レポートの続きになります。

前回はこちら

 

 

縄文の楽しみ方

 

安藤先生に続いてヤス先生のレクチャーが始まりました。

ヤス先生は「縄文時代の遺物の楽しみ方」というテーマで、土器や土偶の造形の魅力について話を進めます。

隆線装飾が人の顔に見える話や、カエルやヘビ等何かの動物を表現しているように見える土器、面白い造形をした土偶の話などなど。

縄文愛が伝わります!

 

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ヤスさんではなくヤス先生。

 

 

そして「一生楽しめる縄文」ということで、博物館巡りの話をしていました。

 

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全国の歴史博物館は448箇所あり、類似施設を合わせると2869箇所!

 

2869箇所全てに縄文や考古資料が置いてあると仮定して施設の制覇を目指すと、達成するには一生かかってしまうかもしれません。

これなら老後まで十分に楽しめるし、縄文時代って本当に奥が深いなぁ~。

会場にいる学生さんが、実際に土偶を見に博物館へ行ってくれるようになればいいなー。

 

また大湯環状列石や田んぼに忽然と立つ2メートル近い石棒や、土偶や縄文をテーマにしたアート展示等、博物館ではない場所でも縄文時代が楽しめることも伝えていました。

 

 

 

縄文時代の顔

 

ヤス先生のレクチャーで特に興味深かったのは、左右対称でない顔の表現についてです。

これは土偶や顔面把手の顔を左右で半分に割り、左側同士を合わせた顔と右側同士を合わせた顔では表情が全く異なるというもの。

精工な土器や土偶を作る人たちが顔部分を左右対称に作れないはずはないので、この表情には何か意図があるのではないか、という話でした。

 

一番上が加工前の顔。左右で少しずれているように見えます。

真ん中が左側同士、一番下が右側同士を合わせて加工したものです。

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こんなにも表情が変わるんですね…!

左右のバランスが異なる土偶に会ったら、横顔からもしっかり眺めたいです。

 

 

縄文時代の遺物の魅力を十分に伝えてくれたヤス先生ですが、結局のところはっきりしたことは分からないので、そこも魅力の一つだと言っていました。

縄文時代って、分からないところまでが美味しいんです。

 

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「分からない」

 

 

 

遺物に触れる

 

レクチャーが終わると展示の解説です。

土器と石器と漆については安藤先生が、装身具と呪具と土偶と木彫土偶についてはヤス先生が解説を担当します。

 

解説の途中で、

「触っていいんですよ。両手でやさしく持ってくださいね」

と参加者の間に遺物が回ってきました。

 

一般の人が遺物に触れる機会なんてそんなに多くありません。

縄文人もこれを触ってたのか…!

自然と気持ちが盛り上がります。

 

尖頭器の刃先の鋭さと繊細さにちょっとびびったり、大きくて重そうな三内丸山の土器を持ち上げたら見た目より軽かったりと(あくまで主観です)、触れて初めて分かることが沢山ありました。

 

そして亀ヶ岡文化の大洞式土器は、薄くしっかりと作られているのが印象的でした。

表面も磨かれていて、緻密な仕上がりにうっとり。

現代の器と比べてもあまり違和感がないので骨董市でおじさんに「これは青森の大洞焼きだよ」とかって売ってたら、よくわかんないけど格好いい器だなーって買って普通に使っちゃいそう。

お茶碗形の縄文土器に白米を盛る背徳感……!

想像が広がります。

 

 

 

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亀ヶ岡文化の優品。

綺麗に磨かれていて、真上から見るとほぼ正円に作られているのがわかる。

ろくろの無かった時代の職人技が光ります。

 


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分厚く土らしいざらついた感触にほのかな温かみを感じる。

見た目より軽い。

 

 

当時の匠(?)が作った美しい石器や土器。

離したくない…。

本当はもっと眺めていたいけど大人ですから我慢して、そっと隣の人へ回します。

 

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両手でそっと。

 

 

耳飾りに触れる

 

私は縄文人の付けていた耳飾りを模して、現代のイヤリングを作成しています。

博物館へ行くとガラスケースの中にある耳飾りから、デザインや大きさや胎土や質感など、ありったけのことを見ようとします。

 

以前安藤先生の研究室へ伺った際に、土製耳飾りに初めて触れる機会がありました。

その時一番驚いたのは裏側のハリボテ感です。

 

縄文人は耳たぶに開けた穴を徐々に広げていく、今で言うボディピアスの穴に、大きなものだと直径10cm近くにもなる耳飾りを嵌めます。

大きければその分重量も増すため、軽量化のためか裏側がくり抜かれているのです。

またくり抜くだけでなく真ん中に穴の開いたものや、透かし彫りを施して軽量化とデザイン性を兼ね備えたようなもの、小さな穴しか開いていない人でも大きな耳飾りをして見えるようラッパ型に激しく広がったものなどもあります。

 

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透かし彫りの耳飾り。

裏側(画像右)がくり抜かれています。

 

 

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小さな穴しか開いてなくても大きな耳飾りを着けたい。

そんな願いを叶えるラッパ型の広がり。

 

 

これらのデザインは軽量化だけが目的ではないでしょうし、耳飾りの大きさが名誉の象徴なのか美の基準であったのか、はっきりしたことはわかりません。

しかし大きな耳飾りを着けたいという縄文人の努力の跡を感じましたし、実際に触れて裏側を見たことで初めて耳飾りを通して人間を見ることができました。

 

 

 

歴史の見方

 

レクチャーで安藤先生が紹介された2つの縄文のイメージは180度異なるものでした。

しかしそれらは考古学的な発見や時代の空気等が混じりあってつくられるものです。

1970年代以降もイメージは変化しているし、これからも変化していくでしょう。


今回の講座のキーワードは ”見方・視点” でした。

「歴史とは現代の視点から見た過去の評価であり、真実を表すものではない」

まとめのグループワーク発表の後、安藤先生はこう続けられました。

 

縄文や考古学の見方は幾らでもあり、多様な視点から見ることで若い人たちにも魅力を感じてほしい。

歴史という枠を越えた視点から考古学を見ることの重要性や今回のように遺物に触れる試みのことや、また最後には、学問に縛られない多面的な見方で縄文を表現しているのがヤスさんであると言われました。

 

今回ヤスさんが講師として招へいされた理由が最後にわかりました。

 

 

私は遺物を通して人間を見たいという、歴史にちょっと夢を見がちなタイプです。

生活スタイルも価値観も社会の常識も異なる縄文人だから、人間の普遍的な部分もあるだろうけれど違うところも沢山あるでしょう。

その違うところ、例えば日常の色んな場面で喜怒哀楽のポイントも違うだろうなとか考えると、萌えます。

縄文人との価値観の相違萌えです。

その萌えを支えてくれる、開かれた考古学の提示は一般の考古趣味者にとってもありがたいことですし、すそ野を広げることによって今後の考古学ももっと盛り上がっていくのだなぁと、最後には胸が熱くなる充実の講座でした。

 

安藤先生、ヤス先生、ありがとうございました。

 

 

 

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